働くしあわせプロジェクト:インタビュー


「障がいのある人の働く場づくり」をミッションに、地域資源を生かした商品で勝負

作業風景当初、私は単純に福祉施設の工賃が倍増できればいい、市場ニーズのある商品を、環境と接点を持ちながらつくっていければいいと思っていました。しかし、実際にオーガニックのお弁当事業をやってみたら、良い面と悪い面とが見つかったんです。

お客さんが喜ぶお弁当にしようと思い、料理研究家や調理師さんたちと一緒に次々と新しいレシピを開発して複数のレシピを入れました。ところが、そうすると福祉施設では毎回異なる作業をしなければなりません。そして、お弁当をつくる作業は午前中に集中し、売れるとどんどん、障がいのある人を支える施設の職員さんに管理負荷がかかってしまいました。オーガニック農家さん、お客さん、障がいのある人たちにとってハッピーな事業だったかもしれないけど、職員さんはハッピーとはいえなかったんです。

これまでの活動を通じて、障がいのある人の働く場をつくることが、私のミッションとなっていましたから、アンハッピーな人が出てくることで、働く場を広げることができない事業なら見直しが必要だと。そこで、NEC/ETIC.主催でスタートアップの社会起業家のビジネスを支援してくれる「NEC社会起業塾」を通じて事業の再構築をして、生まれたのが、玉ねぎを飴色になるまで炒めた調味料「オニオン・キャラメリゼ」です。これは規格外の玉ねぎを、福祉施設の働きやすい環境で、障がいのある人たちが炒めてつくったものを販売するというシンプルな事業です。
兵庫県・淡路島は玉ねぎの産地です。ブランド力のある地域資源で、全国に通用する付加価値の高い商品がつくれる可能性がありました。都会と地方では障がいのある人の就労の機会に格差がありますから、できれば地方でできるモデルに挑戦しよう。中でも支援が遅れている発達障がいのある人の就労支援につながるモデルづくりからチャレンジしようと思いました。

そこで、08年に法人化し、社名は、常に「プラス」するのは「リジョン(融合)」の視点でという意味で「プラスリジョン」。障がいのある人の働く場づくりを推進する活動方針そのものを社名に込めました。
「オニオン・キャラメリゼ」の製造工程はすべて障がい者施設の利用者である障がいのある人が担当し、これから稼働する施設も含めて、現在、4つの施設で製造してもらっています。商品にトラブルがあったことは、これまでに一度もないですね。大手企業とも取引し、ファッション雑誌やグルメ雑誌でも紹介していただいています。「障がい者がつくった商品」という点ではなく、「オーガニックの商品」として商品力に注目していただいていることも嬉しいです。
福祉施設の皆さんと二人三脚でやっていますが、障がいのある人がきっちり作業に従事できたら、品質の高いものができます。それができないのは、障がいのある人に問題があるのではなく、管理レベルの問題。商品力や製造工程に問題があるんです。その誤解は、解いていきたいですね。

障がい者スタッフ「障がいは個人に属するものではなく、環境に依存するもの」と私は思っています。障がいのある人は仕事ができないと勘違いされるのは、わたしたちが働きやすい環境やルールに、彼らを無理やり合わせようとするからなんですよ。
たとえ話ですが、見るという行為に障がいが「ある」場合、メガネをかければ障がいは「ない」にかわります。移動するという行為に障がいが「ある」場合、車イスによる障がいは「ない」にかわります。メガネや車イスといったツールで、障がいは「ある」から「ない」に変えられますよね?
障がいの「ある」「なし」の境界線は変えられるんです。障がい特性に合わせた合理的配慮で環境を整えさえすれば、障がい者の働く力だって「ない」から「ある」に必ず変えられる。「働けない」から「働ける」に変えられるんです。みんなで力をあわせればできる。そう私は信じています。